本文へスキップ
地方の駅前に並ぶ通勤用の自転車

NEWS

初任給23.8万円・募集時給+4.02%|2026年の賃上げが採用に与える圧力

初任給を引き上げた企業は89.1%で平均237,903円、アルバイト・パートの募集時給は9か月で4.02%上昇し全国平均1,242円。一方で中小企業の賃上げは60.9%が「防衛的」。2026年の賃金動向が採用実務に何を強いるかを整理します。

2026年の賃金動向を採用の視点で並べると、1つの構図が見えてきます。新卒の初任給とアルバイトの募集時給は上がり続けているが、上げている企業の多くは「上げたいから」ではなく「上げないと採れないから」上げている。この違いが、採用実務で打てる手を左右します。

新卒:89.1%が初任給を引き上げ、平均237,903円

マイナビが2026年6月3〜20日に3,590社(上場239社・非上場3,351社)を対象に実施した調査では、初任給を引き上げた企業は89.1%、平均支給額は237,903円でした。いずれも3年連続の増加です。

企業規模別に見ても差は小さく、すでに規模を問わない動きになっています。

従業員規模引き上げた企業の割合
300人未満88.5%
300〜999人89.7%
1,000人以上91.1%

3年以上連続で引き上げている企業は43.3%です。

注目すべきは引き上げ理由です。

  • 「求職者へのアピール」:59.8%(最多)
  • 「給与制度の見直しで全社員の給与を引き上げ」:49.7%

1位が採用目的であるという点が重要です。初任給は待遇である以上に、いまや求人票上の競争条件になっています。そして約半数の企業では、それが既存社員の給与引き上げにまで波及しています。

アルバイト・パート:募集時給は9か月で4.02%上昇

フロッグ(HRog)が主要4媒体(イーアイデム、バイトル、マイナビバイト、ハローワーク)のアルバイト・パート求人を集計した結果では、2025年9月から2026年6月の約9か月間で募集時給が4.02%上昇し、全国平均は1,242円に達しました。過去最大水準となった最低賃金改定の影響が例年以上に表れた、としています。

さらに重要なのが次の数字です。

最低賃金と同額の求人の割合が、全国平均で14.79%から20.35%へ増加(約2割)

地域差も出ています。

地域最低賃金と同額の求人の変化
中部地方13.91% → 24.54%(10.63pt上昇)
全国平均14.79% → 20.35%

最低賃金との差額も縮んでおり、東京都では161円から141円へ20円縮小しました。職種別では医療・福祉が差額234円で最大、販売・接客は最低賃金と同額の求人が30%を超えています。

これは「時給で差をつける余地が縮んでいる」ことを意味します。 最低賃金が上がった分をそのまま反映しただけの求人が2割を占め、上乗せする体力のある企業との差がつきにくくなっています。

中小企業:改定率4.29%だが、6割は「防衛的賃上げ」

日本商工会議所・東京商工会議所が2026年4〜5月に2,260社を対象に実施した調査では、賃金改定額1万2,036円、改定率4.29%(前年度比0.26ポイント上昇)でした。

しかし内訳を見ると、状況は一様ではありません。

項目全体小規模企業(20人以下)
賃金改定額12,036円9,573円
賃金改定率4.29%3.52%
賃上げ実施・予定71.3%59.9%
改定率0%以下18.3%28.7%

そして賃上げの性質です。

  • 「防衛的賃上げ」(物価対応や人材確保が理由):60.9%
  • 「前向きな賃上げ」(業績好調):39.1%

小規模企業では防衛的が**66.3%**に上ります。地方の小規模企業では改定額9,445円・改定率3.56%と4%を下回ります。

業績が良いから上げているのは4割弱、という事実は採用戦略に直接効いてきます。賃上げ余力が限られている企業は、賃金以外の条件で競争せざるを得ないということです。

マクロ:名目3.2%増、実質1.4%増

厚生労働省が2026年7月7日に発表した毎月勤労統計調査(令和8年5月分速報)では、現金給与総額311,165円で前年同月比3.2%増、実質賃金指数(持家帰属家賃除く)も1.4%増となりました。

区分現金給与総額前年同月比
就業形態計311,165円3.2%増
一般労働者400,312円3.5%増
パートタイム労働者113,759円1.5%増
パートタイム(時間当たり)1,452円4.9%増

パートタイムの時間当たり給与が4.9%増と最も高い伸びです。前述の募集時給4.02%上昇と整合しており、時給市場の上昇が統計にも表れていることが確認できます。

なお賞与については、夏のボーナスで建設業が初の200万円超えとなった一方、業種間の格差が拡大していると報じられています(日本経済新聞、有料会員限定のため詳細は未確認)。

採用実務への影響4点

1. 初任給の見劣りは母集団に直結する

引き上げ理由の1位が「求職者へのアピール」59.8%であるということは、競合他社は初任給を採用施策として動かしているということです。平均237,903円に対して自社が下回っているなら、それは待遇の問題ではなく募集条件の問題として扱う必要があります。

2. 賃上げは採用予算だけの話ではなくなる

49.7%の企業が初任給引き上げに合わせて全社員の給与も引き上げています。新卒初任給だけを上げると既存社員との逆転が起き、定着側の問題に転化します。採用部門が初任給の引き上げを提案する際は、人件費全体への波及を織り込んだ形で持っていくほうが通りやすくなります。

3. 時給求人は「時給以外」で差をつける

最低賃金と同額の求人が2割に達し、地域によっては24.54%です。時給の数字だけでは埋没します。求人票で差がつくのは以下です。

  • シフトの柔軟性(週1日〜、時間帯の選択肢)
  • 交通費・手当の明示(「規定支給」ではなく上限額を書く)
  • 未経験可の具体化(研修期間、初日の流れ)
  • 職場の情報(人数、年齢層、写真)

時給を上げられない場合、上げるべきは情報量です。

4. 地域差を前提に条件を設計する

最低賃金引き上げ率が高い地域ほど上乗せ余力が小さくなります。東京都の差額141円に対し秋田県は78円。複数拠点で採用している企業は、全社一律の時給テーブルでは地域ごとの競争力が揃いません。

求人票の見直しチェックリスト

賃上げ局面で最低限確認すべき項目です。

項目確認内容
初任給平均237,903円と比べて自社はどの位置か
時給該当地域の最低賃金+いくらか。同額になっていないか
昇給の明示「昇給あり」ではなく実績額・実績率を書けるか
賞与の明示「賞与あり」ではなく支給月数・実績を書けるか
手当交通費・住宅手当・資格手当の上限額を明記できるか
既存社員との整合募集条件が既存社員の水準を上回っていないか

「あり」で済ませている項目を数値に置き換えるだけで、比較検討時の見え方は変わります。 賃金を上げられない企業ほど、この作業の効果が大きくなります。

まとめ

  • 初任給を引き上げた企業は89.1%、平均237,903円。理由の1位は「求職者へのアピール」59.8%
  • 49.7%が初任給引き上げに合わせて全社員の給与も引き上げており、採用施策が人件費全体に波及している
  • アルバイト・パートの募集時給は9か月で4.02%上昇、全国平均1,242円。最低賃金と同額の求人が約2割に拡大
  • 中小企業の改定率は4.29%だが、60.9%が「防衛的賃上げ」。小規模企業では改定率3.52%、0%以下が28.7%
  • マクロでは名目3.2%増・実質1.4%増。パートタイムの時間当たり給与は4.9%増と最も高い伸び
  • 時給で差がつかない局面では、求人票の情報量(昇給・賞与・手当の実績値)で差をつける

出典・参考資料

  1. 初任給を引き上げた企業は89.1%、平均23.8万円に (求人ボックス ジャーナル(マイナビ調査))
  2. 最低賃金改定後の影響レポート(募集時給の推移) (HRog(フロッグ))
  3. 中小企業の賃金改定調査(賃金改定率4.29%) (労働政策研究・研修機構(日本商工会議所・東京商工会議所調査))
  4. 毎月勤労統計調査 令和8年5月分結果速報 (日本の人事部(厚生労働省 2026年7月7日発表))
  5. 2026年度の最低賃金改定 (taxlabor.com)
  6. 夏ボーナスで建設が初の200万円超え (日本経済新聞)

Related 関連記事