AI人材の需要と給与が数字で見える形になってきました。同時に、候補者が転職活動でAIをどう使えているかには、年収帯で2.4倍の差が開いています。求人を出す側にとって、この2つは別々の話ではありません。
需要:AI関連の検索は3.7倍に
求人ボックスの集計では、サイト内の「AI」関連キーワードの検索数が2023年9月時点と比べて2026年7月は3.7倍に増加しました。
求人側の構成も変わっています。
| 項目(東京都) | 件数 |
|---|---|
| 全エンジニア求人数 | 119,179件 |
| うちAIエンジニア求人数 | 24,026件 |
| 比率 | 20%超 |
エンジニア求人の5件に1件がAI関連という水準です。生成AI関連求人に限っても平均42,591件が出ています。
給与:全エンジニア平均を月15.9万円上回る
| 職種(東京都) | 平均月給 |
|---|---|
| AIエンジニア | 69.6万円 |
| 全エンジニア | 53.7万円 |
| 差 | 15.9万円(約1.3倍) |
年収換算で約191万円の差です。生成AI関連求人の平均年収は743万円と報告されています。
採用側から見れば、AI人材を採るには通常のエンジニア採用より年190万円多く払う前提で予算を組む必要があるということです。既存のエンジニア給与テーブルの延長では届きません。
なお、この給与差は「AIを使える」ことに対して払われているわけではない点に注意が必要です。別調査では正社員全体の生成AI利用率がすでに54.3%に達しており、**利用経験そのものは希少性を失っています。**差がついているのは設計・実装できる層です。
候補者側:AI活用に年収で2.4倍の格差
一方、転職する側でも差が開いています。OurStoryが2026年4月17〜18日に、過去3年以内に転職活動を経験した23〜49歳の正社員500人に実施した調査です。
生成AIでキャリアの悩みや自己分析について「考えを整理できた」と回答した割合です。
| 年収帯 | 割合 |
|---|---|
| 800万円以上 | 58.6% |
| 600万〜800万円未満 | 44.9% |
| 600万円未満 | 24.3% |
最高層と最低層で約2.4倍の差があります。
ただし「求人が見つかる」のは18.2%止まり
同じ調査で、生成AIによって「自分にマッチする具体的な求人が見つかった」と答えた割合です。
| 年収帯 | 割合 |
|---|---|
| 800万円以上 | 18.2% |
| 600万〜800万円未満 | 8.9% |
| 600万円未満 | 7% |
最も活用できている層でも2割に届きません。
この2つの数字を並べると、いま起きていることがはっきりします。
生成AIは「自分を整理する」ことはできているが、「自分に合う求人を見つける」ことはできていない。
自己分析の整理は、本人の経験という手元の情報だけで完結します。一方、求人とのマッチングには外部にある求人情報が、AIが読み取れる形で存在している必要があります。そこが追いついていません。
採用側への示唆
1. 求人票は「AIが読める粒度」で書く
候補者の6割近く(高年収層)が生成AIで思考を整理し、そのうえで求人を探しています。しかし求人が見つかるのは18.2%。この差は求人情報の側の問題です。
「風通しの良い職場」「幅広い業務」といった表現は、AIが条件照合に使えません。具体化すべき項目は次のとおりです。
- 使用技術・ツールの具体名
- 給与レンジの実額(「経験による」で終わらせない)
- 想定する経験年数と、必須要件・歓迎要件の区別
- 1日の業務構成、リモート可否と頻度
これは**AIのためだけの施策ではありません。**人が読んでも判断しやすくなります。
2. スカウトの精度が可視化されている
同調査では、年収800万円以上の層について次の結果が出ています。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 「経歴を読まずに送られた」と感じるスカウトを受けた | 54.5% |
| 「業務内容が求人情報と異なった」と感じた | 53.5% |
高年収層の半数以上が、スカウトの雑さと求人情報の不正確さを実感しています。 候補者がAIで情報を整理できるようになったぶん、送られてくる文面が定型かどうかは以前より簡単に見抜かれます。
送信数を増やす運用は、この層に対しては逆効果になりつつあります。
3. AI人材の要件定義を先に固める
エンジニア求人の20%超がAI関連という競争環境で、月給69.6万円が相場です。予算を確保できないなら、採用ではなく既存社員の育成に振り向けるほうが現実的な水準に来ています。
採用する場合は、「AIを使える人」ではなく「何を設計・評価できる人か」で要件を書いてください。前者はすでに正社員の半数以上が該当し、要件として機能しません。
まとめ
- 求人ボックスのAI関連検索数は2023年9月比3.7倍。東京都のエンジニア求人の20%超がAI関連
- AIエンジニアの平均月給は69.6万円で、全エンジニア平均を15.9万円(年約191万円)上回る
- 候補者側の生成AI活用には年収帯で2.4倍の格差(800万円以上58.6%、600万円未満24.3%)
- ただし「マッチする求人が見つかった」は最上位層でも18.2%。AIは整理はできるがマッチングはできていない
- 差を埋めるのは求人情報の具体性。技術名・給与レンジ・必須と歓迎の区別を明示する
- 高年収層の54.5%が「経歴を読まないスカウト」を、53.5%が「求人と実際の業務の乖離」を経験している
出典・参考資料
- AI関連求人・検索数の推移と給与水準 (求人ボックス ジャーナル)
- 転職経験者500人の生成AI活用調査 (HRプロ(OurStory調査))
Related 関連記事
定着オンボーディング生成AI
新入社員の20.1%が職場で孤独|その41.6%が「3年以内に辞める」と回答
2026年卒の新入社員800人のうち20.1%が職場で孤独を感じ、その層の41.6%が3年以内の退職を想定していました。相談先には生成AIが21.7%で入り込んでいます。テレワーク実施率の低下と併せて、接点をどう設計し直すかを整理します。
生成AI採用広報応募者体験
求職者の71.0%が「AIの否定的な情報」で応募を見送っている
生成AIに企業の評判を尋ねてから応募を判断する行動が広がり、71.0%がAIの否定的な情報で応募を断念した経験を持つという調査結果が出ました。企業側に痕跡が残らない「サイレント離脱」の実態と、AIに参照される情報をどう整えるかを整理します。
賃上げ人事部AI活用
賃上げの理由が「業績」から「人材確保」へ|人事部のAI活用は39.2%
賃上げを実施・予定する企業は73%に達し、判断要素の上位は物価29.7%・離職防止26.2%・優秀人材の採用強化24%。一方で人事部のAI活用は39.2%にとどまり、人員不足45.2%・専門性不足44.6%を抱えています。採用の当事者である人事部自身の体制問題を整理します。