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求人媒体・採用ツールの動き|「集約」と、その逆を行く選択

1回の入稿で複数媒体へ自動掲載、対応履歴の一元化、ATSと広告運用の一体提供と「集約」が進む一方、県単位の地域特化で伸びる媒体もあります。KPIを応募数から応募獲得店舗率へ変えて3,000名を採用した事例まで、採用インフラの現在地を整理します。

2026年7月に出た採用サービスの動きを並べると、方向が揃っています。分散していたものを1か所に集約するという流れです。入稿先、対応履歴、広告運用、求職者接点。それぞれ別のレイヤーで同じことが起きています。

入稿の集約:1回の入札で複数媒体に自動掲載

イオレは2026年7月24日、運用型求人広告プラットフォーム「HR Ads Platform」がAnn社の運営する「らくらく求人検索」と新たに連携したことを発表しました。

このプラットフォームは運用型広告の手法を採用しており、企業が求人広告を入札すると、提携する複数の求人メディアに自動掲載される仕組みです。導入企業は1,500社以上(2026年5月時点)。

従来のように媒体ごとに原稿を作り、掲載期間と料金を個別に契約する形と比べると、運用の負荷が大きく変わります。一方で、どの媒体からどんな応募が来たかを自分でコントロールしにくくなるという側面もあります。

見極めるポイント:提携媒体のラインナップに、自社のターゲットが使う媒体が含まれているか。そして媒体別の応募数・単価をレポートで確認できるかどうかです。ここが見えないと、有効応募の単価を管理できません。

対応履歴の集約:応募者ごとに1本のタイムライン

ダトラは同じ2026年7月24日、採用管理システム「トルー」に応募者タイムライン機能を追加しました。選考に関するアクションを1つの履歴として時系列に可視化するもので、集積される対象は以下です。

  • メール・LINE・SMSの送受信履歴
  • 面接日時の設定・変更
  • 面接評価の入力
  • 不採用・辞退処理

「誰が・いつ・何をしたか」が記録され、各行から詳細を確認できます。 区分ごとのチェックボックスで絞り込みも可能です。

狙いとして挙げられているのは、連絡漏れ・対応の重複の防止と、担当者間の引き継ぎ漏れの削減です。

これは工数構造から見て理にかなった機能追加です。 ゼクウの調査では、応募者1名あたりの工程別所要時間は連絡往復13分、面談後の記録21分。連絡手段がメール・LINE・SMSに分散していると、「この応募者に何をどこまで伝えたか」を確認する作業自体が発生します。複数担当者で回している企業では、確認漏れが二重連絡や放置につながります。

見極めるポイント:自社が使っている連絡手段すべてが履歴に入るか。LINEやSMSを別ツールで運用している場合、履歴が分断されたままでは効果が出ません。

広告運用とATSの一体化

求人ジャーナルは2026年7月2日、40周年記念として、ATS「えんと〜り」利用企業向けの採用支援キャンペーンを発表しました。

「えんと〜り」は自社採用サイトの作成、求人情報の作成・管理、応募受付、応募者管理に対応し、「求人ジャーナルネット」と自動連携します。今回のキャンペーンでは、クライアントのIndeed広告費に対して同社が広告予算を追加投資するアドオンが適用されます。

ATSベンダーが広告運用まで踏み込む形です。媒体・ATS・広告運用が別事業者に分かれていると、応募が来ない原因の切り分けに時間がかかります。一体で提供されれば、そこが速くなります。

見極めるポイント:広告予算の追加投資という条件は魅力的ですが、キャンペーン終了後の通常料金と、他のATSへ移行する場合のデータ移行可否を先に確認してください。媒体とATSが同一事業者だと、乗り換えの障壁が上がります。

求職者接点の再活用:求人サイトを入口にした人材紹介

ビースタイルスマートキャリアは2026年7月1日、「しゅふJOBエージェント」の提供を開始しました。

仕組みは、同社が企業の採用要件をヒアリングして求人を作成し、既存の求人サイト「しゅふJOB」に掲載。応募者から適格な候補者を選定して企業に紹介するというものです。対象は**家庭との両立を希望する求職者層(しゅふ層)**で、正社員採用を支援します。2026年7月1日〜8月31日は、正社員採用1名につき紹介手数料50万円(税別)で提供されています。

求人サイトの集客基盤を人材紹介の母集団形成に転用する形です。パート・アルバイト層として集客していた層に対して正社員のポジションを提示する動きで、賃上げ局面で正社員化のニーズが高まっていることと整合します。

見極めるポイント:一般的な人材紹介の手数料は理論年収の30〜35%が相場です。年収400万円のポジションなら120〜140万円になるため、50万円という水準はキャンペーンとして安価です。ただし対象層が限定されるため、自社のポジションが「家庭との両立」を前提に設計できるか(時短勤務、時間帯の柔軟性など)が使えるかどうかの分かれ目になります。

地域特化:全国展開ではなく「県単位」で深く

集約とは逆の動きもあります。インタラクティブ(沖縄県宜野湾市)は2026年8月12日、求人サイト「ジョブアンテナ」の愛媛版が登録会員6,000人を突破したことを発表しました。

同社は2016年の沖縄を皮切りに、北海道(2021年)、福岡・熊本・京都・鹿児島・富山・山形(2022年以降)と県単位で展開しています。愛媛版は8月10日時点で約60社・240件以上の求人を掲載し、地場企業からIT・インターネット関連まで対応しています。

会員属性も公表されており、平均年齢35.5歳、60%以上が「半年以内の転職」を希望しています。

大手媒体が全国の求人を集める方向に進むのに対し、県単位で会員の質と業種カバー率を上げるという戦い方です。地方で採用する企業にとっては、全国媒体で埋もれるより、地域媒体で上位に出るほうが応募につながる場合があります。

見極めるポイント:会員数の絶対値ではなく、自社の商圏と職種で何件の求人が出ているかを確認してください。掲載企業約60社という規模は、競合が少ない反面、求職者の母集団も限られます。全国媒体との併用が前提になります。

市場全体:Indeedの好調が示すもの

サービス単位の動きだけでなく、市場規模も動いています。リクルートホールディングスは2027年3月期の連結純利益予想を52%上方修正し、株価がストップ高水準(前週末比3,000円・22.78%高の1万6,165円)まで買われたと報じられました。HRテクノロジー事業(Indeed)が好調だったことが背景とされています。

元記事は有料会員限定のため、Indeed単体の売上高など詳細な数値は確認できていません。

求人検索エンジンへの出稿が伸びているという事実は、採用手法の重心が従来型の掲載課金からクリック課金・運用型へ移っていることの裏付けになります。前述のイオレの運用型プラットフォームや、求人ジャーナルのIndeed広告アドオンも同じ流れの上にあります。

Indeedの規模と、検索の季節性

前述のリクルートHDの好調を、利用実態の側から見た数字も公開されています(YORISOIが2026年版レポートとして公開)。

項目数値
月間総訪問数2,860万以上(Similarweb・2026年6月)
モバイル利用率85%
毎月の新規掲載求人数110万件

**モバイル85%という比率は、求人原稿の書き方に直結します。**スマートフォンの画面で読まれる前提なら、冒頭数行で条件が分かる構成が必要です。PCで作った長文の原稿は、実際にはほとんど読まれていない可能性があります。

検索の季節性も分析されています(Indeedの2022年1月〜2024年12月データ)。

  • 12月に減少し、1月から増加、3月にピーク
  • 3月がピークの職種:事務、医療関連、ドライバー、歯科、営業、警備、不動産、運送
  • 飲食は5月がピークと異なるサイクル

また、リモートワーク検索は2019年比2.9倍(2025年3月時点で全体の2.2%)、フルリモート検索は90.9倍、週休3日関連求人は5年間で5.3倍に増加しています。

**予算配分を年間均等に置いている企業は、ここを見直す余地があります。**自社の職種のピーク月に厚く張るほうが、同じ予算でも応募が取れます。

資金調達:HERPが19億円

サービス側の動きとして、HERPがシリーズCで19億円を調達し、累計調達額が34億円になったことが報じられました。「HERP Hire」と「ジョブミル」は累計4,000社以上に導入され、「HERP Career」の月間利用者は10万人以上とされています。

有料会員限定記事のため、調達の詳細と資金使途は確認できていません。

採用管理システム領域に資金が入り続けていることは、機能競争がまだ続くことを意味します。選定する側から見れば、いま比較して決めた機能差が1年後には埋まっている可能性を織り込む必要があります。前述の「データを持ち出せるか」という確認項目が重要になるのは、この理由からです。

運用事例:KPIを「応募数」から「応募獲得店舗率」へ

サービスの機能より、指標の置き換えで成果を出した事例が公開されています。1,100店舗以上を展開するFOOD & LIFE COMPANIES(スシロー等)がIndeed PLUSを活用した取り組みです。

同社の課題は店舗ごとの採用格差でした。応募が集まる店舗と集まらない店舗の差が慢性的に続き、人手不足の店舗では売上と接客品質が下がり、さらに人が集まりにくくなるという悪循環が生じていました。

転換したのはKPIです。

従来変更後
目標応募数の増加と応募単価の低下応募獲得店舗率100%
予算配分一律の大量募集本部予算を確保し、苦戦店舗へ重点投下

成果として、「求人を出しても応募ゼロ」の店舗が解消され、応募獲得店舗率で30〜50%以上の改善を達成。元従業員(アルムナイ)向けに個別最適化した求人原稿を作成し、約3,000名の採用につなげています。お盆・年末年始の繁忙期に、初めてヘルプスタッフ・派遣スタッフなしで対応できたとされています。

多店舗展開企業にとって示唆的なのは、平均値で管理することの危うさです。 全社の応募単価が改善していても、応募ゼロの店舗が残っていれば現場は回りません。「何店舗で応募が取れているか」を指標にすると、予算配分の判断が変わります。

なお、アルムナイ採用で約3,000名という規模は、既存の接点を母集団として扱えるかどうかで採用力が変わることを示しています。退職者の連絡先を管理していない企業では、そもそも実行できない施策です。

短期就業を「相性確認」に使う動き

タイミーが長期アルバイト採用の支援を開始したことも報じられています。120万人超が長期就業に関心を示すなか、1日働く「プレバイト」で双方の相性を確かめ、ミスマッチを抑えるという設計です。

有料会員限定記事のため、料金体系などの詳細は確認できていません。

面接で見極める代わりに、実際に働いてもらって判断するという発想は、介護領域で派遣から直接雇用への転換が機能している構造と同じです。選考の精度を上げるのではなく、選考の前に実体験を挟むというアプローチが、複数の領域で同時に出てきています。

共通する論点:集約は乗り換えコストを生む

4つの動きに共通するのは集約です。そして集約には必ず裏側があります。

集約されるもの得られるもの生まれるリスク
入稿(複数媒体へ自動掲載)運用工数の削減媒体別の制御が効きにくくなる
対応履歴(1タイムライン)対応漏れ・二重連絡の防止対象外の連絡手段があると効果が出ない
広告運用+ATS原因の切り分けが速い事業者を変えにくくなる
集客+人材紹介母集団形成の手間が減る対象層が事業者の強みに依存する

「便利になる」と「動けなくなる」は同じコインの裏表です。 導入時に確認すべきは次の3点に絞られます。

  1. データを持ち出せるか(応募者データ、対応履歴、媒体別実績のエクスポート)
  2. 契約の縛りはどれくらいか(最低契約期間、キャンペーン終了後の料金)
  3. 自社のターゲットに合っているか(提携媒体、対象求職者層)

特に1つ目は、導入時に最も軽視され、乗り換え時に最も問題になります。

まとめ

  • イオレ「HR Ads Platform」は1回の入札で提携複数媒体に自動掲載する運用型モデル。導入1,500社以上
  • ダトラ「トルー」の応募者タイムラインは、メール・LINE・SMS・面接評価・辞退処理を時系列に集約し、対応漏れと二重連絡を防ぐ
  • 求人ジャーナルはATS「えんと〜り」利用企業のIndeed広告費に予算を追加投資。媒体・ATS・広告運用の一体提供
  • 「しゅふJOBエージェント」は求人サイトの集客基盤を人材紹介に転用し、しゅふ層の正社員採用を支援(キャンペーン手数料50万円)
  • 一方で「ジョブアンテナ」は県単位の地域特化で伸びており、集約とは逆の戦い方も成立している
  • FOOD & LIFE COMPANIESはKPIを応募数から「応募獲得店舗率」へ変え、応募ゼロ店舗を解消。アルムナイ約3,000名を採用した
  • タイミーの「プレバイト」は、選考の精度を上げるのではなく選考の前に実体験を挟むアプローチ
  • Indeedはモバイル利用率85%、検索は3月がピーク(飲食は5月)。予算の年間均等配分は見直す余地がある
  • HERPが19億円を調達。機能競争が続く前提で、データの持ち出し可否を確認しておく
  • 共通するのは「集約」。導入前にデータの持ち出し可否、契約の縛り、対象層の適合を確認する

出典・参考資料

  1. イオレのHR Ads Platformが「らくらく求人検索」と連携 (HRog(イオレ))
  2. 採用管理システム「トルー」に応募者タイムライン機能 (ダトラ)
  3. 求人ジャーナル、ATS「えんと〜り」利用企業向けにIndeed広告支援を強化 (求人ジャーナル)
  4. 「しゅふJOBエージェント」提供開始 (ビースタイルスマートキャリア)
  5. 採用業務の「見えない工数」実態調査2026 (日本の人事部(ゼクウ調査))
  6. 「ジョブアンテナ愛媛」登録会員6,000人突破 (インタラクティブ)
  7. リクルートHDが上方修正、HRテクノロジー事業が好調 (日本経済新聞)
  8. FOOD & LIFE COMPANIESのIndeed PLUS活用事例 (Indeed)
  9. タイミー、長期アルバイト採用支援「プレバイト」を展開 (日本経済新聞)
  10. Indeedの国内利用データ(2026年版レポート) (HRog(YORISOI))
  11. HERP、シリーズCで19億円を調達 (日本経済新聞)

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