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人事がAI推進に関与するには|空白の45.6%が示すキャリアの分岐点

人事部の45.6%はAI推進に関与しておらず、活用率39.2%は正社員全体の54.3%を下回ります。一方で企業の最大の課題は「設計・評価できる人材の不足」45.9%。この空白に入る具体的な手順と、職務経歴書での書き方を整理します。

人事のキャリアで、いま最も大きな空白があるのはAIの領域です。ただし「AIを使えること」ではありません。企業が足りないとしているのは「設計・評価できる人材」で、その不足を挙げた企業は45.9%。一方、人事部の45.6%はAI推進に関与していません。

この2つの数字の間が、そのままキャリアの分岐点になります。

「使える」はもう要件にならない

まず前提を確認します。パーソル総合研究所の調査では、正社員の生成AI業務利用率は54.3%(2025年10月の41.9%から半年で12.4ポイント上昇)、週4日以上使うヘビーユーザーは**21.1%**です。

半数以上が使っている状態で、「生成AIを使えます」は差別化になりません。

にもかかわらず、人事部の状況は違います。

項目割合
人事部のAI活用率39.2%
正社員全体の生成AI利用率54.3%
情報漏洩・プライバシー保護への不安66.7%
AI推進に関与していない45.6%

人事部は全体より15ポイント低い水準です。活用業務も「議事録・翻訳・メール下書きなどの定型業務」が中心とされています。

情報漏洩への不安は正当だが、全面停止の理由にはならない

活用が進まない理由として、情報漏洩・プライバシー保護への不安が**66.7%**で挙がっています。**これは正当な懸念です。**人事部は候補者の個人情報、評価情報、給与情報を扱います。

ただし、この懸念が該当しない業務も多数あります。

個人情報を扱わない人事業務AIを使える度合い
求人原稿の作成・改善高い
面接質問の設計高い
調査データの整理・要約高い
社内向け資料の作成高い
制度設計の論点整理高い
候補者の評価・スクリーニング要ルール整備
人事評価・タレントマネジメント要ルール整備

**「人事はAIを使えない」ではなく「使える業務と使えない業務の線を引いていない」**というのが実態に近いはずです。線を引くこと自体が、関与の第一歩になります。

企業が本当に困っているのは設計と評価

パーソルキャリアが売上高1,000億円以上の企業の部長職以上505名に実施した調査です。

項目割合
AIエージェントを本番運用している48.3%
うち全社展開・経営戦略統合レベル20.0%
PoC以上の実施企業で効果を実感59.0%
推進人材・体制に不足感がある73.1%
最大の課題「設計・評価できる人材の不足」45.9%

導入は半数近くまで進み、効果も6割が実感している。それでも7割超が体制不足を訴えている。

つまり、ツールを入れる段階は終わり、「どの業務に、どう組み込み、何をもって成功とするか」を決められる人が足りていません。

成果が出ない企業の共通点はデータ基盤

もう一つ、決定的なデータがあります。primeNumberがAI・データ活用担当者373名に実施した調査です。

項目割合
AI活用に「劇的な変革」または「大きな改善」を期待64.9%
「明確な成果が得られている」16.4%

**開きは約49ポイント。**そして成果が出ている企業の特徴が示されています。

  • 成果を実感している企業の26.2%が「データ基盤を全社で統合済み」(全体では13.9%なので約2倍)
  • 今後12か月の優先投資は「生成AI/エージェント型AI開発・運用」が43.4%で最多、データ統合関連は21.7%
  • 生成AIを優先投資対象とした企業の60.5%は、データ基盤投資を優先していない

成果の分かれ目はツールではなくデータ基盤にあるのに、投資はツールに向かっている。

人事にとってこれは好機です。人事データ(採用・評価・勤怠・人員配置)は最も分散している領域であり、そこを整理できる人材は、AI活用の前提条件を握ることになります。

関与するための具体的な手順

「AI推進に関わりたい」と手を挙げるだけでは動きません。関与の入口は、自部門の業務を測ることです。

手順1:自部門の工数を工程別に測る

採用業務の工程別所要時間には業界の中央値があります。

工程中央値
面談後の記録21分
日程調整14分
連絡往復13分
合否・社内すり合わせ12分
採否連絡10分
書類確認4分

**1週間分を工程別に記録するだけで、自部門の数字が出ます。**業界平均との差が、そのまま提案材料になります。

手順2:個人情報を扱わない業務から着手する

前掲の線引きに従い、求人原稿・面接質問設計・データ整理から始めます。情報漏洩リスクを回避しながら、効果を数字で示せる領域です。

手順3:評価指標を先に決める

ここが「設計・評価できる人材」との分岐点です。導入前に、次を決めておきます。

  • 何を改善するのか(工数か、リードタイムか、歩留まりか)
  • どう測るのか(記録の方法と頻度)
  • どこまで下がれば成功なのか

**「便利になった」で終わらせず、数字で語れるようにする。**これが職務経歴書に書ける経験になります。

手順4:出力の検証方法を決める

AIの出力をそのまま使うのか、誰がどう確認するのか。検証プロセスを設計した経験は、そのまま「評価できる人材」の証明になります。

手順5:人事データの現状を把握する

採用管理システム、勤怠、評価、給与が別システムに分かれているか。データを横断して見られるか。成果企業のデータ基盤統合率が2倍という事実は、ここが効くことを示しています。

職務経歴書での書き方

同じ経験でも、書き方で伝わり方が変わります。

弱い書き方強い書き方
生成AIを業務に活用求人原稿の作成にAIを導入し、作成時間を1件あたり◯分から◯分に短縮。品質は応募率で検証した
AI導入プロジェクトに参加適用業務の選定基準を作成し、個人情報を扱う業務を対象外とする社内ルールを策定した
業務効率化を推進工程別の所要時間を測定し、削減効果を金額換算して稟議を通した
データ整備を担当採用管理システムと勤怠データを突合できる状態に整理し、歩留まり分析を可能にした

共通しているのは、判断したこと・測ったことが書かれている点です。「使った」ではなく「決めた」を書きます。

この空白はいつまで続くか

正直に言えば、**この空白は数年で埋まります。**AI活用が当たり前になれば、設計・評価の経験も希少ではなくなります。

ただしいまはまだ45.6%が関与していない状態です。逆に言えば、いま関与している人事は半数以下です。この時期に経験を作れるかどうかで、数年後の位置は変わります。

社内でAI推進の動きがない場合、自部門の業務で小さく始めて実績を作るのが現実的です。全社プロジェクトへの参加を待つ必要はありません。

まとめ

  • 正社員の生成AI利用率は54.3%。「使える」は要件として機能しない
  • 人事部の活用率は39.2%と全体を15ポイント下回り、45.6%がAI推進に関与していない
  • 情報漏洩への不安66.7%は正当だが、個人情報を扱わない業務から始められる
  • 企業の最大の課題は「設計・評価できる人材の不足」45.9%。推進体制の不足感は73.1%
  • 成果が出ている企業はデータ基盤の統合率が2倍(26.2%対13.9%)。投資はツールに偏っている
  • 関与の入口は自部門の工数を測ること。判断したこと・測ったことを書けるかが分岐点
  • この空白は数年で埋まる。いま経験を作れるかどうかで位置が変わる

出典・参考資料

  1. 人事トレンド調査2026(賃上げ判断基準とAI活用) (HRプロ(パーソル総合研究所調査))
  2. 大手企業の「AIエージェント活用」に関する実態調査 (日本の人事部(パーソルキャリア調査))
  3. 企業のAI活用、期待64.9%に対し成果実感は16.4% (HRプロ(primeNumber調査))
  4. 正社員の生成AI利用率54.3%、半年で12.4pt上昇 (求人ボックス ジャーナル(パーソル総合研究所調査))

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