介護のパート求人を見ていると、同じ地域・同じ施設種別でも時給に開きがあります。**そして派遣とパートでは、さらに大きな差があります。**この差がどこから来るのかを、公開データで確認します。
派遣1,895円、パート1,243円
求人ボックスに掲載された介護職の求人データから算出された平均時給です。
| 雇用形態 | 平均時給 |
|---|---|
| 派遣社員 | 1,895円 |
| パート・アルバイト | 1,243円 |
差は約650円です。1日8時間・月20日で換算すると、月あたり10万円以上の開きになります。
ただし**この差は「派遣のほうが得」を意味しません。**理由は後述します。
募集時給は上がり続けている
HRogが求人媒体の掲載データを集計した募集時給レポートでは、9か月間で全国平均が4.02%上昇し、1,242円になりました。
注目すべきは、上昇の中身です。
| 指標 | 変化 |
|---|---|
| 最低賃金と同額の求人の割合 | 14.79% → 20.35% |
| 中部エリアの同額求人 | 13.91% → 24.54% |
| 東京の平均時給と最低賃金の差額 | 161円 → 141円 |
**最低賃金と同額の求人が増えています。**つまり平均時給の上昇は、企業が積極的に賃上げした結果というより、最低賃金の引き上げに押し上げられた部分が大きいということです。
東京では平均と最低賃金の差が161円から141円に縮んでいます。最低賃金が上がった分だけ、上乗せの余地が削られています。
医療・福祉は例外的に上乗せが大きい
一方で、業種別に見ると介護を含む医療・福祉の位置づけは異なります。
| 業種 | 最低賃金との差額 |
|---|---|
| 医療・福祉 | 234円(全業種で最大) |
| 販売・接客 | 同額の求人が30%超 |
医療・福祉は最低賃金に234円上乗せされており、これは全業種で最も大きい数字です。販売・接客では最低賃金と同額の求人が30%を超えるのと対照的です。
人手不足の圧力が、時給に反映されている業種だと言えます。
派遣とパートの650円差の内訳
派遣時給が高い理由は、待遇が良いからではありません。含まれているものが違うからです。
| 項目 | 派遣 | パート |
|---|---|---|
| 交通費 | 時給に含む場合が多い | 別途支給の場合が多い |
| 賞与 | なし | 施設により支給 |
| 退職金 | なし | 施設により制度あり |
| 昇給 | 契約更新時の交渉 | 施設の昇給制度 |
| 雇用の安定性 | 契約期間あり | 期間の定めなしもある |
| 社会保険 | 派遣会社で加入 | 施設で加入 |
**派遣時給には、賞与・退職金・昇給がない分が織り込まれています。**交通費込みの場合、実質時給はさらに下がります。
年収ベースで比較すると差は縮みます。「時給が高い=手取りが多い」とは限りません。
それでも派遣を選ぶ理由
年収で縮むとしても、派遣には別の合理性があります。
1. 職場を確認してから決められる
ネオキャリアが介護派遣から直接雇用に転換した約900人を分析した調査では、60.6%が1年未満で転換しており、最多区分は**3か月未満の24.7%です。転換後の半年継続率は85.3%**でした。
派遣は「試してから決める」手段として機能しています。
2. 勤務条件を指定しやすい
夜勤なし、週3日、日勤のみといった条件は、派遣会社が交渉します。直接雇用より条件を通しやすい場面があります。
3. 合わなければ更新しない選択ができる
契約期間があることは、裏返せば辞めやすいということです。
パートを選ぶ理由
1. 長く働くほど有利になる
昇給・賞与・退職金の制度がある施設では、在籍年数が積み上がるほど派遣との差は逆転します。
2. 正社員登用の入口になる
パートから正社員への登用実績がある施設なら、**時給以外のリターンがあります。**面接で登用実績を確認してください。
3. 交通費が別途支給されやすい
時給1,243円+交通費と、時給1,895円(交通費込み)では、通勤距離によって差が変わります。遠距離ほどパートの実質時給が上がります。
時給以外に確認すべき5項目
求人票の時給だけで比較すると判断を誤ります。
1. 交通費の扱い
**時給に含むのか、別途支給か。**別途支給なら上限額も確認します。
2. 各種手当
- 夜勤手当(1回あたりの額)
- 資格手当(介護福祉士・実務者研修)
- 早出・遅出手当
- 処遇改善手当の配分方法
**処遇改善加算は施設に入りますが、職員への配り方は施設が決めます。**基本給に乗るのか、一時金なのかで年収が変わります。
3. シフトの実態
**「週3日から可」と書かれていても、実際に週3日で組めるとは限りません。**募集人数と現在の職員数を聞いてください。
4. 一人あたりの利用者数
同じ時給でも、**担当する利用者数によって負担はまったく違います。**時間帯ごとの配置人数を確認します。
5. 昇給の有無と実績
パートの場合、昇給制度があるかと、直近の昇給実績の両方を聞きます。制度があっても運用されていない場合があります。
相場より低い求人をどう見るか
地域の最低賃金+数十円という求人は、次のいずれかである可能性があります。
- 未経験・無資格を前提にしている
- 業務が限定的(送迎のみ、調理補助など)
- 処遇改善分を別建てで支給している
- 単純に条件が悪い
**求人票だけでは区別できません。**面接で「この時給で想定している業務範囲」を確認してください。
まとめ
- 介護職の平均時給は派遣1,895円・パート1,243円、差は約650円
- 差の中身は賞与・退職金・昇給の有無。年収ベースでは縮む
- 募集時給は9か月で**+4.02%、全国平均1,242円。ただし最低賃金と同額の求人が14.79%→20.35%に増加**
- 東京では平均と最低賃金の差が161円→141円に縮小。上乗せ余地が削られている
- 医療・福祉は最低賃金との差額234円で全業種最大。人手不足が時給に反映されている
- 派遣は**「試してから決める」手段**。直接雇用への転換は60.6%が1年未満、継続率85.3%
- パートは長く働くほど有利。昇給・賞与・正社員登用の実績を確認する
- 時給以外に交通費の扱い・手当・シフトの実態・配置人数・昇給実績の5項目を確認する
出典・参考資料
- 求人ボックス 給料ナビ 介護職 (求人ボックス(カカクコム))
- HRog 募集時給レポート (HRog(フロッグ))
- 介護派遣から直接雇用への転換に関する調査 (ネオキャリア)
- 地域別最低賃金の全国一覧 (厚生労働省)
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