人事のキャリアは、事業会社の人事部の中だけにあるわけではありません。人事向けのサービスを提供する側という選択肢があります。そして今、この領域には資金と人材の需要が集まっています。
市場に資金が入り続けている
直近の動きだけでも、規模が分かります。
| 動き | 内容 |
|---|---|
| HERP | シリーズCで19億円を調達、累計調達額34億円。「HERP Hire」「ジョブミル」は累計4,000社以上に導入 |
| AI面接サービス | 20近くに乱立し、パソナグループも参入 |
| リクルートHD | 2027年3月期の連結純利益予想を52%上方修正。HRテクノロジー事業が好調 |
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サービスが増えるということは、そこで働く人の需要も増えるということです。
ベンダー側が採用したいのは「顧客の業務を知っている人」
HR SaaSベンダーの顧客は人事部です。製品を売るにも、導入を支援するにも、顧客の業務を理解している必要があります。
しかしエンジニアやセールス出身者の多くは、人事の実務を経験していません。ここに事業会社の人事経験者の価値があります。
具体的には、次のような場面で差が出ます。
- 顧客が「日程調整が大変」と言ったときに、何がどう大変なのかが分かる
- デモで「この機能は現場では使われない」と判断できる
- 導入時に、社内の誰を巻き込めば動くかが読める
評価されやすい4つの職種
| 職種 | 業務内容 | 人事経験が効く理由 |
|---|---|---|
| カスタマーサクセス | 導入後の定着支援、活用促進 | 顧客の運用課題を先回りで想定できる |
| 導入支援・オンボーディング | 初期設定、業務フロー設計 | 顧客の選考フローを理解して設計できる |
| セールス(フィールド) | 提案、商談 | 人事の意思決定プロセスを知っている |
| プロダクトマーケティング | 訴求設計、事例作成、競合分析 | 顧客が本当に困っていることを言語化できる |
最も入りやすいのはカスタマーサクセスと導入支援です。営業経験を問われにくく、業務理解が直接の武器になります。
どんな経験が売りになるか
「人事をやっていました」では伝わりません。ベンダー側が価値を感じるのは、業務の構造を語れることです。
1. ツールの導入・運用を主導した経験
採用管理システムの導入率は**83.6%に達している一方、応募から面接予約までを完全自動化できているのは22.8%**です。夜間・休日を含む初回面接案内の自動化率は34.5%にとどまります。
「入れたが回っていない」企業が大多数という状況は、ベンダー側にとって最大の課題です。
導入を主導し、設定を詰めて自動化率を上げた経験があるなら、それはそのままカスタマーサクセスの実務になります。
2. 社内を動かした経験
ツールが定着しない原因の多くは、現場の面接官が使わないことです。選考が滞る要因の第3位は「面接官・現場からの評価回収」で35.3%を占めます。
現場を巻き込んで運用を変えた経験は、導入支援の場面で直接使えます。
3. 業務を数字で測った経験
工程別の所要時間(面談後の記録21分、日程調整14分など)を実測し、削減効果を金額換算して稟議を通した経験があるなら、これはセールスやプロダクトマーケティングの武器になります。
顧客側の稟議を通す支援ができるためです。
4. 選定する側だった経験
複数のサービスを比較検討し、なぜその製品を選んだか/選ばなかったかを語れることは、競合分析の実務そのものです。
逆に不利になりやすいこと
正直に書きます。次の場合は、転換のハードルが上がります。
| 状況 | 理由 |
|---|---|
| ツールを「使っていた」だけ | 導入・設定を主導していないと、支援側に回れない |
| 社内調整の経験がない | ベンダーの仕事は顧客社内を動かすこと |
| 数字で語れない | SaaSは指標で動く組織。定性的な説明だけでは通りにくい |
| 事業会社の商習慣しか知らない | 目標管理や商談プロセスの文化差が大きい |
特に「使っていただけ」と「導入を主導した」の差は決定的です。
事業会社に戻る道も残る
HR SaaSベンダーでの経験は、事業会社の人事に戻るときにも効きます。
パーソル総合研究所の調査では、人事部の課題は人員不足45.2%、専門性不足44.6%、企画構想力の低さ39.3%でした。さらに45.6%がAI推進に関与していないと回答しています。
ベンダー側で複数社の運用を見た経験は、事業会社側では希少です。「他社がどうやっているか」を知っていることが、そのまま専門性になります。
片道の選択ではなく、行き来できるキャリアとして考えられます。
動くときの現実的な手順
- いまの職場でツールの運用改善を1つ実行する — 「使っていた」から「改善した」に変える。転職の前にできます
- 数字を残す — 自動化率、工数、リードタイム。何でもよいので測ります
- 候補企業のサービスを実際に触る — トライアルやデモを申し込み、顧客目線での評価を言語化しておきます
- 職種を絞る — カスタマーサクセスか導入支援か。求人票の要件が大きく違います
なお、HR SaaSベンダーの求人は管理部門特化型のエージェントでは扱いが薄い場合があります。事業側の職種(CS・セールス・PMM)に分類されるためです。IT・SaaS領域を扱うエージェントとの併用が現実的です。
まとめ
- HR領域には資金が入り続けている。HERPは19億円調達、AI面接は20近くに乱立
- ベンダーが採用したいのは顧客の業務を知っている人。人事経験がそのまま差になる
- 入りやすいのはカスタマーサクセスと導入支援。営業経験を問われにくい
- 売りになるのは「ツールの導入を主導した」「社内を動かした」「業務を数字で測った」「選定する側だった」経験
- **「使っていた」だけでは足りない。**ATS導入率83.6%に対し完全自動化22.8%という状況が、その差の価値を示している
- ベンダー経験は事業会社の人事に戻るときにも効く。専門性不足44.6%という課題への回答になる
- HR SaaSの求人は管理部門特化型では扱いが薄い場合がある。IT・SaaS領域のエージェントと併用する
出典・参考資料
- HERP、シリーズCで19億円を調達 (日本経済新聞)
- AI面接サービスが約20に乱立、パソナも参入 (日本経済新聞)
- 採用管理システム(ATS)利用実態調査2026 (日本の人事部(ゼクウ調査))
- リクルートHDが上方修正、HRテクノロジー事業が好調 (日本経済新聞)
- 人事トレンド調査2026 (HRプロ(パーソル総合研究所調査))
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