人事のキャリアを考えるとき、参考にすべきは転職サイトの求人票ではありません。人事部を採用する側が、いま何に困っているかです。企業側の調査データを読むと、評価される経験がかなりはっきり見えてきます。
このサイトは普段、採用する側の実務を扱っています。その視点をそのまま裏返して、人事のキャリアに当てはめたのがこの記事です。
人事部そのものが人手不足である
パーソル総合研究所が全国2,000名(係長以上の正規雇用者および経営・役員)に実施した「人事トレンド調査2026」の結果です。
| 人事部が直面する課題 | 割合 |
|---|---|
| 人員不足 | 45.2% |
| 専門性不足 | 44.6% |
| 企画構想力の低さ | 39.3% |
採用を担う部門自身が、人員不足と専門性不足を抱えています。
これは求職者側から見れば、**需要があるという意味です。**ただし「人手が足りないから誰でもいい」ではありません。同率で「専門性不足」が挙がっている点が重要です。頭数ではなく、特定の専門性が足りていない。
足りていない専門性は特定できる
同じ調査から、何が不足しているかが読み取れます。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 人事部でのAI活用率 | 39.2% |
| AI推進に関与していない | 45.6% |
| 情報漏洩・プライバシー保護への不安 | 66.7% |
正社員全体の生成AI業務利用率が54.3%であるのに対し、人事部の活用率は39.2%と下回っています。
さらに大手企業(売上高1,000億円以上、部長職以上505名)の調査では、AIエージェントの本番運用が48.3%まで進む一方、**73.1%が推進体制の不足感を訴え、最大の課題は「設計・評価できる人材の不足」45.9%**でした。
全社のAI活用は進むのに、人事部はその設計に関与できていない。 ここが空白です。
「使える」は要件として機能しない
注意すべきは、「生成AIを使えます」では差別化にならないことです。正社員の54.3%がすでに使っています。
企業が不足しているとしているのは**「設計・評価できる人材」**です。職務経歴書に書くべきは次のような内容になります。
- どの業務プロセスにAIを組み込み、何を指標に評価したか
- 出力の妥当性をどう検証したか
- データの整備や連携にどこまで関与したか
「使ったことがある」と「業務に組み込んで成果を測った」の間には大きな差があります。後者を語れるかどうかが分岐点です。
採用実務の経験も、語り方で価値が変わる
もう一つ、企業側のデータから見える空白があります。
採用管理システムの導入率は**83.6%に達している一方、応募から面接予約までを完全自動化できているのは22.8%**にとどまります。夜間・休日を含む初回面接案内の自動化率は34.5%です。
つまり**「ツールは入れたが回っていない」企業が大多数**です。
ここから逆算すると、評価されるのは「ATSを使っていた」ではなく、次のような経験です。
| 弱い書き方 | 強い書き方 |
|---|---|
| 採用管理システムを運用 | 応募から面接予約までの自動化率を◯%から◯%へ改善 |
| 母集団形成を担当 | 媒体別の有効応募単価を可視化し、予算配分を組み替えた |
| 面接を年間◯件実施 | 選考の滞留要因を工程別に測定し、日程調整の工数を◯分削減 |
数字で語れる人が少ない領域なので、測定した経験そのものが差別化になります。
見極めの手法を持っているかも問われている
人事1,000名を対象とした別の調査では、**76.4%が「採用判断はどう見極めるかから、どのような情報を得るかへ変化している」**と回答し、79.9%が本人から提供される情報だけでは不十分としています。
第三者情報(リファレンスチェック)の活用は26.5%、検討・情報収集中を含めると約9割です。
選考手法を更新できる人材が求められているということです。従来の面接運用を回してきただけでは、この変化に対応する人として見られにくくなります。
管理部門の転職市場という選択肢
人事は「管理部門」の一職種です。経理・財務・法務・総務と並んで扱われ、管理部門に特化した転職支援サービスが複数存在します。
一般的な総合型の転職エージェントと比べたときの違いは次の点です。
| 観点 | 総合型 | 管理部門特化型 |
|---|---|---|
| 求人の幅 | 広い(営業・IT含む) | 管理部門に限定 |
| 担当者の理解度 | 職種横断のため浅くなりやすい | 職種の実務を前提に話せる |
| 非公開求人 | 量は多い | 管理部門に絞られる |
| 向いている人 | 職種を変える可能性がある人 | 管理部門で専門性を深める人 |
人事として専門性を深める方向であれば、特化型のほうが会話が成立しやすいというのが構造上の理由です。ただし求人の絶対数は総合型のほうが多いため、両方に登録して比較するのが現実的です。
具体的なサービスの比較は、別記事で扱います。 当サイトは料金・条件を検証してから掲載する方針のため、各社の対応領域と実績を確認したうえで公開します。
まとめ
- 人事部の課題は人員不足45.2%と専門性不足44.6%。頭数ではなく特定の専門性が不足している
- 人事部のAI活用率は39.2%で正社員全体の54.3%を下回り、45.6%はAI推進に関与していない。ここが最大の空白
- 「AIを使える」は要件として機能しない。設計・評価した経験を語れるかが分岐点
- ATS導入率83.6%に対し完全自動化は22.8%。「運用していた」より改善した数値を語る
- 採用判断は「見極め方」から「情報の取り方」へ移行(76.4%が実感)。選考手法を更新できる人材が求められている
- 管理部門特化型のエージェントは職種理解の深さが利点。求人数では総合型が勝るため併用が現実的
出典・参考資料
- 人事トレンド調査2026(賃上げ判断基準とAI活用) (HRプロ(パーソル総合研究所調査))
- 大手企業の「AIエージェント活用」に関する実態調査 (日本の人事部(パーソルキャリア調査))
- 採用管理システム(ATS)利用実態調査2026 (日本の人事部(ゼクウ調査))
- 採用判断の実態調査(人事1,000名) (日本の人事部(back check調査))
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