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中途の早期離職コストは1人607万円|採用単価から「活躍コスト」へ

中途採用者が6か月で離職した場合の損失は1人607万円、5年で約4割増という試算が出ました。定着に課題を感じる企業は81.2%。採用単価の安さではなく入社後の活躍までを含めて測る「活躍コスト」の考え方と、実務で使える計算手順を整理します。

中途採用した社員が6か月で離職した場合の損失は、1人あたり607万円。エン・ジャパンの試算が報じられ、この額が5年で約4割増えていることも示されました。採用単価を1万円下げる努力より、1人の早期離職を防ぐほうが金額的な効果が大きい、という話です。

607万円という数字の中身

エン・ジャパンが運営する「エン エージェント」の転職支援サービスのデータをもとにしたモデル試算で、中途採用した社員が6か月で離職した場合の損失が1人あたり607万円、5年前と比べて約4割増という結果です。

元記事は有料会員限定のため、内訳(給与・採用費・研修費の構成比)と増加要因の詳細は確認できていません。社内資料に引用する際は原記事でのご確認をおすすめします。

内訳が公開されていない試算をそのまま社内提案に使うのは危険です。ただし、自社の数字で同じ計算をすることはできます。後半で手順を示します。

「活躍コスト」という考え方

ウィルネクストは2026年7月22日、採用ROIの捉え方として「活躍コスト」を提唱する内容を発表しました。従来の採用コスト(採用費÷採用人数)が採用した時点で計測を終えるのに対し、入社後のオンボーディング、育成、早期離職時の再採用費用まで含めて人材投資を見る、という考え方です。

同社は、採用時に「なぜ働くのか(内発的動機)」「何を大切にしているか(価値観)」が確認されていない現状を課題として挙げています。

なお、この発表には具体的な金額の試算は含まれていません。「早期離職は700万円超の損失」といった数値と併せて語られることがありますが、同社の発表資料に当該金額の記載は確認できませんでした。金額を引用する場合は出典を分けて扱う必要があります。

概念としては素直です。採用単価を評価指標にすると、安く採ることが正義になる。しかし安く採った結果として半年で辞められれば、採用単価の削減額を大きく超える損失が出ます。指標を変えなければ、現場の行動は変わりません。

定着に課題を感じる企業は81.2%

損失が起きる頻度についても数字があります。アイ・ラーニングが2026年4月に実施した「新入社員育成・定着課題調査2026」(従業員50名以上の企業で新入社員・若手育成に関わる500名)では、81.2%の企業が定着に課題を感じているという結果でした(「強く感じている」33.4%+「やや感じている」47.8%)。

早期離職・定着課題の要因は次のとおりです。

要因割合
仕事内容と期待のミスマッチ56.9%
人間関係(上司・先輩・同僚)53.3%
教え方の統一が欠けている42.2%
職場文化・価値観の不適合41.9%

そして最も示唆的な数字がこれです。

入社後に身につけるべきスキルが「明確化されている」企業はわずか14.2%

企業が求める能力と不足を感じる能力は一致しています(コミュニケーション力:求める60.0%/不足57.2%、主体性・自律性:43.0%/43.2%、問題解決力:41.2%/39.6%)。求めるものは分かっているのに、入社後に何を身につけさせるかは決まっていない。この状態で「主体性が足りない」と評価されれば、本人には理不尽に映ります。

要因の1位が「仕事内容と期待のミスマッチ」56.9%であることと、スキル明確化14.2%という数字は、同じ問題の表と裏です。

採用側で打てる手はどこか

早期離職の要因を見ると、採用フェーズで打てるものと、入社後でしか打てないものに分かれます。

要因採用フェーズで対処できるか
仕事内容と期待のミスマッチ 56.9%できる(求人票と面接での情報開示)
人間関係 53.3%部分的(配属先の情報開示まで)
教え方の統一欠如 42.2%できない(受け入れ側の課題)
職場文化・価値観の不適合 41.9%できる(選考での相互確認)

最大要因のミスマッチ56.9%は、採用側の情報開示の設計で減らせます。 具体的には次の3点です。

  1. 求人票に「できないこと」も書く。良い面だけを書いた求人票は、入社後の期待値ギャップを自分で作っていることになります
  2. 面接で仕事の実際を見せる。1日の業務の流れ、繁忙期の状況、現場の人と話す機会を選考に組み込みます
  3. 配属の可能性を事前に伝える。配属先が確定していない場合、その旨と決定時期を明示します

いずれも「候補者を減らす」施策です。母集団は減りますが、入社後に607万円を失う確率が下がります。どちらを重く見るかは、指標を採用単価から活躍コストに変えるかどうかで決まります。

自社の早期離職コストを計算する手順

他社の試算より、自社の数字のほうが説得力があります。次の項目を足すだけです。

1. 採用にかかった直接費

  • 求人媒体費・エージェント手数料(理論年収の30〜35%が相場)
  • 採用担当者の人件費(工数×時間単価)
  • 面接官の人件費(面接時間×人数×時間単価)

採用担当者の工数は見落とされやすい部分です。 工程別の所要時間(中央値)は、面談後の記録21分、日程調整14分、連絡往復13分、合否・社内すり合わせ12分、採否連絡10分、書類確認4分。1名の採用に至るまでに何人の応募者を対応したかを掛ければ、実際の工数が出ます。

2. 在籍期間中に支払った費用

  • 給与・社会保険料(在籍月数分)
  • 研修費・OJT担当者の工数
  • 貸与機器・環境整備費

3. 離職によって発生する費用

  • 引き継ぎ・後任決定までの業務停滞
  • 再採用にかかる費用(1に戻る)
  • 周囲のモチベーション低下(金額化は困難なので注記に留める)

4. 得られなかった価値

  • 立ち上がりに要する期間(一般に3〜6か月)に、まだ生産性が期待値に達していない分

1〜3を足すだけでも、多くの企業では数百万円規模になります。 この数字を持って「採用単価を下げる」より「ミスマッチを減らす」ほうが投資対効果が高いと説明するのが、最も通りやすい社内提案の形です。

指標を変えるときの注意点

活躍コストへの移行には、実務上のハードルが2つあります。

1つ目は測定期間です。 採用単価は採用した月に確定しますが、活躍コストは入社後6か月〜1年待たないと分かりません。評価指標としては遅い。採用単価を捨てるのではなく、採用単価(短期のモニタリング)と定着率・活躍度(中期の評価)を併用するのが現実的です。

2つ目は責任範囲です。 早期離職の要因のうち「教え方の統一欠如」42.2%や「人間関係」53.3%は、採用部門では対処できません。活躍コストを採用部門の評価指標にすると、コントロールできない要因で評価されることになります。指標を導入するなら、受け入れ部門の責任範囲も同時に定義する必要があります。

まとめ

  • 中途採用者が6か月で離職した場合の損失は1人607万円(エン・ジャパン試算)、5年で約4割増
  • 定着に課題を感じる企業は81.2%。最大要因は「仕事内容と期待のミスマッチ」56.9%
  • 入社後に身につけるべきスキルが明確な企業はわずか14.2%
  • ミスマッチは採用フェーズの情報開示で減らせる。「できないこと」も開示するほうが、結果的に損失が小さい
  • 採用単価から活躍コストへの移行は、測定期間の遅さと責任範囲の分担という2つの課題を先に整理してから行う
  • 他社の試算より、自社の直接費・在籍中費用・離職時費用を足した数字のほうが社内提案では通る

採用工程のどこに時間がかかっているかを把握することが、この計算の前提になります。工数の実測値は下記の記事にまとめています。

出典・参考資料

  1. 中途社員の早期離職コスト、1人607万円で5年比約4割増 (日本経済新聞(エン・ジャパン試算))
  2. 新入社員育成・定着課題調査2026 (日本の人事部(アイ・ラーニング調査))
  3. 採用ROIの新指標「活躍コスト」に関する発表 (ウィルネクスト)
  4. 採用業務の「見えない工数」実態調査2026 (日本の人事部(ゼクウ調査))

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