27卒のリクナビでは、求人数が前年比約7倍に増えた一方、掲載企業数は約3割減りました。求人が増えたのに企業が減ったという一見矛盾した数字の意味を理解しないまま競合分析をすると、初任給の相場を4万円も高く見誤ります。
求人7倍・企業3割減の実態
フロッグが保有する求人ビッグデータ(約150の求人媒体から蓄積、調査期間は2025年3月3日および2026年2月9日〜6月1日)による集計です。
| 項目 | リクナビ2026 | リクナビ2027(2026年3月2日時点) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 求人数 | 11,248件 | 70,884件 | 約7倍 |
| 掲載企業数 | 10,962社 | 7,108社 | 約3割減 |
企業の入れ替わりも大きく、離脱5,701社に対し新規参入1,847社でした。
なぜ求人が増えて企業が減ったのか
答えは1社あたりの掲載件数です。平均9件。従来のように1社1求人ではなく、職種ごとに分けて複数の求人票を出す運用が広がりました。
職種別・規模別に見ると差があります。
| 区分 | 1社あたりの平均求人数 |
|---|---|
| 飲食系 | 12.8件 |
| 営業・事務 | 9.5件 |
| 販売・接客 | 7.6件 |
| 従業員50人以下 | 約3件 |
| 従業員5,001人以上 | 約50件 |
大企業は約50件の求人票を出し、小規模企業は約3件です。掲載枠あたりの露出量を、求人票の本数で調整できるようになったということです。これは検索結果に表示される機会が本数に比例するためで、実質的に露出の買い増しに近い効果を持ちます。
初任給データの落とし穴
ここが実務上、最も重要な点です。
リクナビのデータから重複している求人を除外すると、初任給のボリュームゾーンは21万円台。 重複を含めた全体では25万円台が最多に見える。
差は約4万円です。
なぜこうなるのか。初任給が高い企業ほど、複数職種で多くの求人票を出しているためです。1社が50件の求人票を出せば、その企業の初任給が50回カウントされます。結果としてサイト全体の平均が引き上げられます。
これを知らずに「リクナビの初任給は25万円台が最多」というデータで社内提案をすると、実態より高い水準を前提にした計画を立ててしまいます。
競合分析でやるべきこと
- 求人票の数ではなく企業数で数える。同一企業の複数求人は1件として扱う
- 平均値ではなく分布を見る。上位企業の多重掲載に引っ張られるため、中央値のほうが実態に近い
- 自社と同規模の企業だけで比較する。従業員50人以下は約3件、5,001人以上は約50件と掲載行動がまったく違うため、規模を揃えずに比較すると意味がありません
なお他の調査では、マイナビが3,590社を対象とした調査で初任給の平均支給額を237,903円としています。媒体上の見え方(25万円台)と企業ベースの実態(21〜23万円台)には差があるという前提で読む必要があります。
学生側:SNSで55.0%が「後悔」
媒体構造の変化と並行して、学生の情報収集も変わっています。
ネオキャリア(キャリアトラス)が2026年6月4〜9日に実施した調査では、2027年3月卒業予定で内定を保有し、就職活動でSNSを活用した経験がある109名を対象に次の結果が出ました。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| SNSの情報を信じて後悔した経験あり | 55.0%(何度もある27.5%+一度ある27.5%) |
| 後悔の理由「不安を煽る投稿を見て焦った」 | 50.0% |
| SNS経由で企業説明会・インターンに参加 | 30.3% |
| SNSで初めて知った企業にエントリー | 27.5% |
対象は109名と母数が小さく、かつ「SNSを活用した経験者」に限定されています。傾向の把握に用いるのが適切です。
利用しているSNS(複数回答)はX(旧Twitter)64.2%、Instagram 38.5%、YouTube 38.5%。
そして最も実務に効くのが、信頼度の順位です。
| 情報源 | 最も信頼できると回答した割合 |
|---|---|
| 企業の公式採用ページ | 33.9% |
| 実際の選考経験者によるクローズドコミュニティ | 29.4% |
| リクナビ・マイナビなどの求人サイト | 29.4% |
SNSで接点を持ち、公式採用ページで確認するという行動です。SNSは27.5%の学生に新しい企業を知らせる入口として機能していますが、判断の根拠にはなっていません。
採用側の打ち手
- 公式採用ページの情報を増やす。最も信頼される情報源であり、投資対効果が高い。特に「不安を煽る投稿で焦った」50.0%という結果を踏まえると、選考フロー・時期・評価基準を明示することは不安の解消として直接効きます
- SNSは認知の入口として設計する。転換を狙うのではなく、公式ページへ導く役割に絞る
- 選考経験者のクローズドコミュニティ(29.4%)は制御できない。制御しようとするより、実際の選考体験を良くするほうが結果的に効きます
通年採用という別のアプローチ
ニトリは2026年4月13日、2026年度から総合職で通年採用を導入すると発表しました。入社時期を従来の4月・10月に加え、7月と1月を新設して年4回に拡大し、採用選考を随時受け付ける形にしています。
背景として挙げられているのは、大学4年から就職活動を開始する学生、既卒者、留学経験者など、多様化する学生のライフスタイルに合わせるという狙いです。
求人票の本数を増やして露出を取る戦い方とは別のアプローチです。掲載枠での競争を避け、同じ時期に一斉に競わないという選択と読めます。エントリー時期をずらせる企業にとっては、競合の少ない時期に接点を持てるという意味で合理的です。
まとめ
- 27卒リクナビは求人数が約7倍(70,884件)、掲載企業数は約3割減(7,108社)。1社あたり平均9件の複数掲載が理由
- 掲載件数は規模で大きく異なる(50人以下は約3件、5,001人以上は約50件)
- 初任給は重複除外で21万円台、重複込みで25万円台。約4万円の差が生じるため、競合分析は企業数ベース・中央値・同規模比較で行う
- 学生はSNSで企業を知り(27.5%がエントリー)、公式採用ページで判断する(信頼度33.9%で最高)
- SNS情報で後悔した経験は55.0%、理由の半数は「不安を煽る投稿で焦った」。選考フローの明示が不安解消に直接効く
- 通年採用(ニトリは入社時期を年4回に)は、掲載枠での競争を避けるもう一つの選択肢
出典・参考資料
- 27卒リクナビ「求人7倍・企業3割減」の構造変化 (HRog(フロッグ))
- 27卒就活生のSNS活用実態調査 (ネオキャリア(キャリアトラス))
- ニトリ、採用選考を随時受け付ける通年採用を導入 (日本の人事部)
Related 関連記事
採用ミスマッチ体験入社選考設計
採用ミスマッチの71%は3か月以内に露見する|対策1位は「体験入社」
採用担当経験者の80.0%がミスマッチを経験し、気づくのは入社直後が43.8%で最多。今後取り入れたい対策の1位は「体験入社・トライアル雇用」45.0%でした。選考の精度を上げるのではなく、選考の前に実体験を挟むという発想が複数領域で同時に出ています。
介護採用母集団形成人材派遣
介護職の転職は68.4%が経験者|「未経験歓迎」が効かない市場構造
介護職への転職者の68.4%は前職も介護・医療職で、求職者の年齢中央値は47歳。異業種からの流入が限定的な市場で、母集団を増やす以外にどこへ手を打つべきか。派遣経由の直接雇用が60.6%を占めるデータとあわせて整理します。
選考設計リファレンスチェック見極め
採用判断は「見極め方」から「情報の取り方」へ|人事1,000名調査
人事の76.4%が「採用判断はどう見極めるかから、どのような情報を得るかへ変わった」と実感し、79.9%が本人からの情報だけでは不十分と回答。第三者情報を検討する企業が6割に達した背景と、導入前に整理すべき論点を整理します。