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KNOWHOW

応募者1名の対応は「10分」ではない|見えない工数の分解と削減手順

採用担当者は応募者1名の対応を約10分と認識していますが、工程別に聞くと面談後の記録21分、日程調整14分という実測値が出ています。ゼクウの調査データをもとに、どの工程から手を付けるべきかを優先順位つきで整理します。

「応募者1名の対応にどれくらい時間がかかっていますか」と採用担当者に聞くと、約10分という答えが返ってきます。ところが工程を分けて聞き直すと、面談後の記録だけで21分、日程調整で14分という数字が出てきます。認識と実態がずれている理由と、どこから手を付けるべきかを整理します。

認識は10分、実測は14分以上

株式会社ゼクウが2026年3月3日〜4日に全国の採用担当者・人事責任者1,002名に実施した「採用業務の『見えない工数』実態調査2026」の結果です。

応募者1名への対応時間を一括で質問した場合、認識されている時間は約10分(最頻値は「5〜10分未満」で27.5%)でした。しかし日程調整について具体的に質問すると、中央値で約14分という回答になりました。

つまり、日程調整という1工程だけで、担当者が「応募者1名にかかる時間」として認識している総量を超えています。

工程別の実測値

工程を分解すると次のようになります(いずれも中央値)。

工程時間内容
面談後の記録21分面談メモの整理、評価入力、社内共有
日程調整14分候補日の提示、往復、確定、リマインド
連絡往復13分応募者との事務連絡
合否・社内すり合わせ12分面接官・現場との確認
採否連絡10分合否の通知
書類確認4分応募書類の確認

単純に合計すると、応募者1名あたり74分です。認識されている約10分の7倍以上になります。

なぜ認識とずれるのか

数字がずれる理由は3つあります。

1. 「対応」という言葉が書類確認と面接に限定されている

工程別で最も短いのは書類確認の4分です。担当者が「応募者対応」として思い浮かべているのは、この書類確認と面接そのものである可能性が高い。日程調整や記録は「対応」ではなく「事務」として意識の外に置かれています。

2. 細切れに発生するため累積が見えない

日程調整は1回のやり取りでは数分です。しかし候補日の提示、応募者の返信待ち、変更依頼への対応、リマインドと、複数回に分散して発生します。1回ずつでは短いため、累積時間が体感されません。

3. 待ち時間が計上されない

応募者の返信を待つ時間、面接官の評価を待つ時間は、担当者の作業時間としてはカウントされません。しかし選考のリードタイムは確実に伸びています。この待ち時間が歩留まりに与える影響は、作業時間の集計には現れません。

選考が滞る要因の上位は「調整」

同調査では、選考が滞る主な要因も聞いています。

要因割合
社内の合否判断・条件調整40.2%
日程調整37.3%
面接官・現場からの評価回収35.3%
応募者対応35.1%

上位3つはいずれも**社内または応募者との「調整」**です。選考そのもの(書類を読む、面接する)ではありません。

さらに、業務量の増加によって応募者対応の質が低下することが「時々ある」以上と回答した担当者は53.5%でした。工数の問題が、単なる残業の問題ではなく選考品質の問題に転化していることを示しています。

削減の優先順位

工数を削るなら、次の順序が合理的です。

優先度1:日程調整(14分/件)

自動化の効果が最も明確で、導入の障壁が最も低い工程です。候補者が自分で空き枠を選べる仕組みにすれば、往復のやり取りがゼロになります。面接官のカレンダーと連携できれば、社内確認も不要になります。

削減効果は「14分×応募者数」で計算できるため、社内提案の根拠として最も作りやすい工程でもあります。月間応募100名なら月23時間です。

優先度2:面接官からの評価回収(滞留要因35.3%)

時間そのものは12分ですが、待ち時間が選考リードタイムを最も引き延ばす箇所です。評価入力の期限を設定してリマインドが自動で飛ぶ仕組みにするだけで、督促作業と滞留の両方が減ります。

ここは仕組みよりも運用ルールの問題であることも多いので、「面接から24時間以内に入力」といった社内合意を先に取るのが効果的です。

優先度3:面談後の記録(21分/件)

時間は最長ですが、最後に手を付けるべき工程です。理由は、記録の内容が評価の質に直結するため、単純な削減が選考品質の低下につながりやすいからです。

削るとすれば「転記作業」の部分です。面談メモを別システムに書き写している、評価シートを手作業で集約しているといった二重入力があれば、そこは削れます。評価の記述そのものを短くするのは筋が悪い改善です。

手を付けないほうがよい工程

書類確認(4分)は、そもそも短いため削減余地がありません。ここを削ると母集団の見極めが甘くなり、後工程の工数が増えます。

ツール選定への影響

前提として、ATSの導入率はすでに**83.6%に達しています(同社の別調査)。にもかかわらず、応募から面接予約までを完全自動化できている企業は22.8%**にとどまります。

つまり多くの企業は、ATSを導入済みなのに日程調整の工数を払い続けている状態です。この場合の選択肢は2つです。

  1. 現在のATSで自動化設定が可能かを確認する(設定していないだけのケースが少なくありません)
  2. 自動化範囲が狭い製品を使っている場合は、乗り換えを検討する

いずれにしても、判断の前に自社の工程別の時間を実測しておくことが必要です。この調査の数値は業界平均であり、自社の数字とは異なります。1週間分の作業を工程別に記録するだけでも、どこにボトルネックがあるかは十分見えます。

まとめ

  • 応募者1名の対応時間は認識約10分に対し、工程別の合計では74分(中央値の単純合計)
  • 最長工程は面談後の記録21分、次に日程調整14分
  • 選考が滞る要因の上位は社内調整40.2%、日程調整37.3%、評価回収35.3%と、すべて「調整」
  • 削減の優先順位は「日程調整 → 評価回収 → 記録の転記部分」。書類確認と評価の記述内容は削らない
  • 53.5%の担当者が業務量による対応品質の低下を実感しており、工数削減は品質維持の施策でもある

工数構造を踏まえたATSの選定基準は、下記の記事にまとめています。

出典・参考資料

  1. 採用業務の「見えない工数」実態調査2026(主要工程別の作業時間) (日本の人事部(株式会社ゼクウ調査))
  2. 採用管理システム(ATS)利用実態調査2026 (日本の人事部(株式会社ゼクウ調査))

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