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採用判断は「見極め方」から「情報の取り方」へ|人事1,000名調査

人事の76.4%が「採用判断はどう見極めるかから、どのような情報を得るかへ変わった」と実感し、79.9%が本人からの情報だけでは不十分と回答。第三者情報を検討する企業が6割に達した背景と、導入前に整理すべき論点を整理します。

面接の質問を工夫する、構造化面接を導入する、適性検査を追加する。採用の見極め精度を上げる取り組みは、長らく「手法」の改善として語られてきました。その前提が変わりつつあります。人事の76.4%が「採用判断は『どう見極めるか』から『どのような情報を得るか』へ変化している」と回答した調査結果を読み解きます。

調査の前提

back check株式会社が2026年7月6〜10日に、全国の人事部所属者1,000名を対象に実施したインターネット調査です。

調査主体はリファレンスチェック(第三者への照会)サービスを提供する事業者です。第三者情報の必要性を示す結果が出やすい構造である点は踏まえて読む必要があります。以下では数値をそのまま扱いつつ、判断が必要な箇所には注記を入れています。

76.4%が「情報の問題」への変化を実感

主要な結果は次のとおりです。

項目割合
採用判断が「見極め方」から「情報の取り方」へ変化していると実感76.4%
本人から提供される情報だけでは不十分と感じる79.9%
入社後の活躍・定着を見極める情報の重要性が高まっている64.1%

手法をどれだけ磨いても、入力される情報が同じなら結論は変わらないという認識です。面接の技術論から、判断材料の調達へ論点が移ったと言い換えられます。

何を知りたいのか

不足していると感じられている情報は、上位3つが揃って同じ性質を持っています。

重視される情報割合
人柄・性格56.9%
コミュニケーション力50.5%
協調性・チーム適性48.0%

いずれも書類では分からず、かつ面接の場では候補者が最も準備してくる領域です。 職務経歴やスキルは書類で確認でき、実技でも測れます。しかし人柄や協調性は、1時間の面接で候補者が見せる姿から推定するしかありません。

ここが「情報が足りない」と言われている中身です。

生成AIが拍車をかけた

同調査では、生成AIの普及が判断材料の問題を加速させたことも示されています。

項目割合
本人情報の裏付け確認の必要性が高まった56.6%
第三者情報の必要性が高まった56.2%

職務経歴書も志望動機も、生成AIで整えられるようになりました。文章の完成度が候補者の実力を反映しなくなったため、書類でふるいにかける方式の精度が落ちています。

これは前提の変化であって、候補者を疑うべきという話ではありません。選考の重心を、書類から実際の行動の記録へ移す必要が出てきたということです。

第三者情報の現在地

いわゆるリファレンスチェック(前職の上司・同僚への照会)の利用状況です。

段階割合
すでに活用中26.5%(約4社に1社)
導入検討・情報収集中60.4%

検討段階を含めれば約9割という数字です。ただし「検討・情報収集中」は幅の広い区分で、本格的な導入意向とは限りません。実際に導入しているのは4社に1社という水準を基準に見るのが妥当です。

導入前に整理すべき3点

第三者情報の取得は、扱いを誤ると法務・倫理の問題になります。導入を検討するなら、次の3点を先に決めてください。

1. 同意の取り方

候補者本人の同意なく前職に照会することは、個人情報保護の観点で問題になります。 一般的な運用は、候補者本人に推薦者を指定してもらう形です。この場合、候補者にとって都合の良い推薦者が選ばれる前提で結果を読む必要があります。

「本人が選んだ推薦者ですら指摘する点」は重い情報ですが、「推薦者が褒めた点」は割り引いて読むべきです。

2. 何を聞くか

人柄・協調性を抽象的に尋ねると、抽象的な答えしか返りません。具体的な場面を聞く設計にします。

  • 「協調性はありましたか」ではなく「意見が対立したとき、どう振る舞っていましたか」
  • 「コミュニケーション力は」ではなく「情報共有はどのように行っていましたか」

3. 何に使うか

ここが最も重要です。合否の判断に使うのか、受け入れ体制の設計に使うのかで、必要な情報も運用も変わります。

早期離職の要因を見ると、後者の価値が高いことが分かります。アイ・ラーニングの調査(従業員50名以上の企業で新入社員育成に関わる500名)では、定着課題の要因は次のとおりでした。

要因割合
仕事内容と期待のミスマッチ56.9%
人間関係(上司・先輩・同僚)53.3%
教え方の統一が欠けている42.2%

「教え方の統一が欠けている」42.2%は、候補者側の情報をいくら集めても解決しません。 一方、「この人は細かい指示より裁量を与えたほうが動く」といった情報を受け入れ部門に渡せれば、入社後の定着に直接効きます。

合否のためだけに使うと、判断材料が増えた割に成果が出ないという結果になりがちです。

情報を増やす前にやるべきこと

判断材料を増やす前に、何を判断したいのかが定義されているかを確認してください。

前掲のアイ・ラーニング調査では、**入社後に身につけるべきスキルが「明確化されている」企業はわずか14.2%**でした。求める能力(コミュニケーション力60.0%、主体性・自律性43.0%)は挙げられるのに、入社後に何をどう伸ばすかは決まっていない、という状態です。

この状態で情報だけを増やすと、次のことが起きます。

  • 評価軸がないため、集めた情報を解釈できない
  • 「なんとなく懸念がある」という理由で見送りが増える
  • 判断が属人化し、面接官によって結論が変わる

必要なのは、求める人物像を「入社後6か月で何ができている状態か」に翻訳することです。 そこが決まって初めて、どの情報が判断に効くかが決まります。

なお、判断を誤ったときのコストは無視できません。中途採用者が6か月で離職した場合の損失は1人607万円という試算(エン・ジャパン)が報じられています。情報収集にかけるコストは、この金額と比較して判断するのが合理的です。

まとめ

  • 人事の76.4%が、採用判断の論点が「見極め方」から「情報の取り方」へ移ったと実感
  • 79.9%が本人提供の情報だけでは不十分と回答。不足しているのは人柄56.9%・コミュニケーション力50.5%・協調性48.0%と、いずれも書類で分からず面接で準備される領域
  • 生成AIの普及で裏付け確認の必要性56.6%、第三者情報の必要性56.2%が上昇
  • 第三者情報の活用は26.5%、検討中を含めると約9割。ただし調査主体が当該サービスの提供事業者である点は割り引いて読む
  • 導入前に「同意の取り方」「何を聞くか」「合否に使うのか受け入れ設計に使うのか」を決める
  • 情報を増やす前に、求める人物像を「入社後6か月で何ができている状態か」に翻訳する

出典・参考資料

  1. 採用判断の実態調査(人事1,000名) (日本の人事部(back check調査))
  2. 新入社員育成・定着課題調査2026 (日本の人事部(アイ・ラーニング調査))
  3. 中途社員の早期離職コスト、1人607万円で5年比約4割増 (日本経済新聞(エン・ジャパン試算))

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